概念を大切にする微積分
概念を大切にする微積分 /デボラ・ユーズ=ハレット,アンドリュー・M・グレアソン,ウィリアム・G・マッカラム 他,訳:永橋英郎
■ はじめに
この本は,海外で微積分を考え直す機運が高まった時期に制作された著書の第四版です.概念を大切にする,というタイトルに引かれて読んでみた.
■ ロピタルの法則
関数の商の極限を求める際に,各分母と分子の関数の1階微分の商の極限に置き換えることができる,という法則のようだ.
学校で習った記憶がない.sin(x) / x の極限が社会に出てから時々出てくるが,なぜこれの答えが出せるのか,ずっと疑問だったが,極限が求められるなら仕方がない.
式で書くと以下の通り,
■ 応用とモデル化
会社で純粋な数学が求められる事は,ほとんどない.よって,応用する能力が必要になる.海外の教科書では,モデル化の項が最後に記述されており,しかも内容が豊富であり,参考になった.
□ 氷の厚さの微分方程式
□ 企業の純資産
純資産の初期値がで,収益の年率は,,賃金の支払いは,200とする.
□ 落下する物体の終端速度
物体に作用する力, ,但しは空気抵抗とする.
ここで初期条件,, を与えて,
□ ロジスティックモデル
実行増加率は,指数関数モデルの代表例として詳細に説明がなされてある.ここでは記載しない.人口増加率に,増加率の上限の条件を加えたのが,ロジスティックモデルで,ベルギーの数学者ベルハルストにより,1830年代に提唱された.
人口の増加率は,人口をとすると,
が小さいときは,
と近似される.但し,は相対増加率,本にはの明確な説明がないが,出生率の現象を表しているのだろう.
マイナスの要因があるため,相対増加率が0になる時点が存在する.これを解くとが得られる.この値をと置き,を環境収容力と呼び,人口の極限値となる.
と置き換えると,
これが,ロジスティック方程式の一般形である.この方程式は,変数分離法により解析的に解を求められる.
\begin{align} \frac{dP}{dt} &= kP(1 - P / L) \newline &= kP(\frac{L - P}{L}) \newline \int \frac{dP}{P(L - P)} &= \int \frac{k}{L}dt \newline \int \frac{1}{L} ( \frac{1}{P} + \frac{1}{(L - P)} )dP &= \int \frac{k}{L}dt \newline \ln{|P|} - \ln{|L - P|} &= kt + C \newline \ln{|\frac{(L - P)}{P}|} &= -kt - C \newline |\frac{(L - P)}{P}| &= exp(-kt - C) \newline &= A\,exp(-kt) \hspace{1cm} (A = exp(-C)) \end{align}
の時,を代入してを求めると,
\begin{align} \frac{(L - Po)}{P_o} &= A \,exp \, 0 = A \newline \frac{(L - P)}{P} &= \frac{L}{P} - 1 \,より, \newline \frac{L}{P} &= 1 + A \, exp(-kt) \newline P &= \frac{L}{(1 + A \, exp(-kt))} \hspace{1cm} (A = \frac{(L - P_o)}{P_o}) \end{align}
上記のが,ロジスティック曲線の式である.